プロジェクト

機械事業

予期せぬ
トラブルにも負けない
巴工業の総力が
大型受注へとつながった
  • I瀨 産業機械営業部 営業課
    工学部 機械工学科 卒
  • H田 機械本部
    外国語学部 国際文化交流学科 卒
  • H野 営業技術部 テクニカルセンター
    機械科 卒

MACHINE PROJECT STORY 01 お客様の要求に応えたいという情熱が原動力に

化学品本部の同期社員から商談につながる情報を得たI瀨は早速、伝統ある食品添加物メーカーに対する遠心分離機導入の提案へと動き出した。
処理の対象となる添加物は、増粘多糖類に分類されるもので、わかめや昆布など天然の海藻類を溶解して抽出される。従来はタンク内に溶解液を1~2晩ほど放置し、残さを静置分離させるという、非常に原始的な手法が用いられており、遠心分離機を導入することで、生産効率が飛躍的に改善されるのは明らかだった。
さらに分離タンクが不要になるため工場内の省スペース化につながる。静置分離の際に使用する水の排出もなくなるうえ、高回転で分離させることで処理時間の短縮も可能となる。
「産業機械を担当する私としては、明確な導入メリットを提示することが自らの使命であると考えており、そういった点から見ても、今回は間違いなくお客様のお役に立てると確信していました」
まずは、原料のサンプルを社内のラボに持ち帰り、卓上試験機にて分離可能かどうかの判断を行うことに。技術担当のH野は、高粘度であるという物性を考えると、その扱いに多少の困難が生じることは予測していた。
「しかし、規模の大きなプロジェクトとなる可能性も高く、営業を担当するI瀨さんの情熱にも応えたいと考え、何としてもクライアントが要求する運転能力を実現しようと機器の調整に取り組みました」
そして卓上試験機から3~400リットル対応の小型試験機へとテスト規模を拡大。分離可能であると確証を得た時点で、スケールアップによる実機設計へと進んでいった。

MACHINE PROJECT STORY 02 テストでは判明しなかった問題が持ち上がる

遠心分離機単体でクライアントが求める性能を確保できることは判明したものの、その前工程や後工程との連携については、現場設置による実地試験が必要であった。巴工業が保有するテスト機と、すでにご発注をいただき納入を済ませていた分離機の計2台を連続運転し、原料移送についての検証を始めることにした。この結果をもって、最終的に納入を予定している残り3台の製造に当たる予定だった。ところが、3か月のテスト期間終了間際になって予期せぬ問題が発生。激しい振動が発生し、過負荷による緊急停止がしばしば見られるようになったのだ。
早速、I瀨は現場に入って原因の調査を開始した。
「原料となる海藻類の溶解液の中に、漁網や砂などの不純物が混入し、溶解された海藻類の残さよりも小さな物体が、3か月のテスト期間中、徐々に分離機内部に蓄積され、排出部を詰まらせていることが判明しました」
さらに遠心分離機の内部にて高速で回転する砂が排出部のコンベアーを摩耗させていることも判明。小型機によるテストでは判明しなかった問題を回避するための対策を講じる必要が生じた。
営業アシスタントとしてI瀨をフォローするH田は、緊迫した社内の空気の変化を敏感に感じ取っていた。
「全社的に見ても指折りの規模となる大型プロジェクトとして注目が集まっていただけに、I瀨さんのプレッシャーは大きかったと思います。私たち営業アシスタントもできる限りのフォローはしていこうと、そんな気持ちになっていました」

EPILOGUE プロジェクト体験を糧にさらなる飛躍を

I瀨とH野は素早く協議に入る。分離機内に混入物が入らないようにするか、それとも分離機自体に機能を追加して排出をさせるか、その二つの選択肢しかない。巴工業が持つ知見を総動員して集約し、検討を加えた結果、前工程にサブとなる分離機を1台設置。粗く選り分けたうえで、後工程に供給する方式を提案した。
遠心分離機自体は別途1台が追加となるもののコストメリットがあることを理解いただき、クライアントの承認を得たうえで、再び現場テストをスタート。3か月のテスト期間を経ても目詰まりすることなく、要求性能の保持が可能となり、最終的な仕様が決定した。
現在では、設置工事も完了し、実稼働がスタート。作業効率がアップしたことをうけ、それを工場全体にまで波及させようとする計画が持ち上がっている。伝統ある工場が作業効率を見直すきっかけとなったようだ。
I瀨は、この2年半のプロジェクトを振り返り、自らの成長を実感している。
「以降のプロジェクトでは、あらゆるリスクや可能性を予測することで工程をスムーズに進めていくことができるようになりました」と語る。H野は「有益な知見として今後の業務にも間違いなく活かせます。I瀨さんと意見を交わしながら、見落とされがちな課題をクリアにすることができました」と振り返った。H田はI瀨の姿を見て「きちんと丁寧に対応しているからこそ上司に信頼され、大きな案件を任されるようになっている。今回のプロジェクトでまた、力をつけられたのではないでしょうか」と言う。
さらに経験を積んで社内外から頼られる存在になりたい。このプロジェクトがそんなI瀨の思いを実現するステップとなったのは間違いない。